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熊野筆の歴史

熊野の筆づくりは江戸時代の末期になってからです。
当時、農民たちの多くが農閑期に紀州(和歌山県)、大和、吉野(奈良県)へ出稼ぎに出かけ、その帰り奈良で筆や墨を仕入れ、行商をしながら熊野へ帰りました。
これがきっかけとなり、農業しかなかった熊野に筆づくりという村おこしが始まりました。
「筆といえば熊野を思い、熊野といえば筆を思う」といわれるまでになり、四方を山に囲まれ風光明媚、山紫水明という環境の中で筆づくりの歴史は生き続けています。

熊野筆は、昭和50年5月13日通産省より「伝統工芸品」に指定され、全国の筆の生産量の約9割にも達し、他に類を見ない大生産地を形成しています。
 
当社の取り扱っている筆の多くはこの熊野の筆メーカーです。
いい商品を低価格で販売できるよう日々努力しております。
羊毛について
筆に使われる羊(ヤギ)は、雄・雌・部分によって何十種類にもより分けられ、それぞれ性質の異なる筆原料になります。
特に①の部分は細光峰として重宝されている事は、広く知られています。
ここに、一頭の羊のどの部分よりどの筆毛がとれるか簡単に記してみました。
ご参考にしていただければ幸いです。
                                                                                                                                          
番号部位特徴
のど雄羊細光峰、粗光峰(毛丈は長く毛筋は細い)
雌羊直峰(毛丈は長く毛筋は細い)
背中細長鋒・長羊毛(毛丈は長く毛筋は粗い)
白黄尖峰・黄尖峰(毛丈は短く毛筋は細い)
前足脇蓋尖峰・白黄尖峰・透爪峰・脚爪峰(毛丈は短く毛筋は細く、特に先がよい)
あご羊須(ヤンス)(毛丈は長いが弾力なし)
脚爪峰・上爪峰・粗爪峰(毛丈はさらに短かい)
背・腰棟南峰・中短峰・堤短峰(毛丈は長く毛筋は細い)
腿(もも)脚爪峰・上爪峰・粗爪峰(毛丈はさらに短かい)
羊尾(ヤンオ)(毛丈は長いが弾力あり)
※長栄堂カタログ記載記事より引用。

筆の号数

筆の号数は各社により標示の仕方は様々ですが、穂の長さには関係なく、軸の直径にて号を表します。
号と号の間の大きさの筆はそれぞれ近い方の号数で標示いたします。

-筆のサイズと呼び名-
穂の長さで分ける

穂先の長さにより、長々鋒~短鋒に分けられます。
半紙で練習を始める初心者の方には中鋒サイズがおすすめです。
■長々鋒・・・軸径に対し、穂先が6倍以上のもの。
■長鋒・・・軸径に対し、穂先が4.5~6倍のもの。草書や仮名に。
■中鋒・・・軸径に対し、穂先が3~4.5倍のもの。楷書や行書に。
■短鋒・・・軸径に対し、穂先が2~3倍のもの。篆書などに。

穂の直径で分ける

筆の商品名にある何号という記載により、用途などが分かります。
■1号・・・大筆。穂径1.6~1.8㎝。全紙のような大きな紙向き。
■2号・・・大筆。穂径1.4~1.6㎝。全紙のような大きな紙向き。
■3号・・・中筆。穂径1.2~1.4㎝。半紙で使うのにおすすめの太さ。
■4号・・・中筆。穂径1.0~1.2㎝。半紙で使うのにおすすめの太さ。
■5号・・・中筆。穂径0.9~1.0㎝。半紙で使うのにおすすめの太さ。
■6号・・・中筆。穂径0.8~0.9㎝。書簡や写経など細かな文字向き。
■7号・・・中筆。穂径0.75㎝。書簡や写経など細かな文字向き。
■8号・・・中筆。穂径0.7㎝。書簡や写経など細かな文字向き。
※長栄堂製品

筆の部位について

筆の構造

書道の筆は、様々な動物の毛を束ねて、根元を糸で巻いた穂を軸に詰めたものです。
軸は竹製が多いですが、プラスチックなどで作られたものもあります。

筆の穂首

命毛
穂先の最先端部の毛を命毛と呼び、筆の書き味を決めるもっとも大切な部分です。
様々な毛を使う穂ですが、命毛は特に良い毛が使われます。


穂の中でも二の毛と呼ばれる毛を使った部分に該当する部位。


穂の中でも三の毛、四の毛と呼ばれる毛を使った部分に該当する部位。


穂の中でも五の毛からの毛を使った部分に該当する部位。

ダルマ
別名前骨と呼ばれ、穂を入れる部位。

筆管
筆の軸を筆管と呼び、材質は竹からプラスチックまで様々です。
軸の重量と長さは穂とのバランスが決まる部分であり、書き味に影響を与える重要な部分です。

尻骨
筆管と掛紐をつなぐ部位です。材質は、プラスチックや象牙まで様々。

掛紐
筆吊りに掛ける時に使う紐。
掛紐がない筆は、筆吊りに吊ることができないので購入の際注意が必要です。

良い筆の見分け方

1.穂先が割れたりせずに鋭く尖っていて、まとまりがあること。特に小筆は先が利いてまとまりがあること。
2.穂先全体が整っているもの、毛がバランスよく巻いてあるもの。
3.毛が丈夫で適度な弾力がある。筆のはらが筆圧に応じて適度に弾力があり、離すと元に戻ること。
4.穂全体が綺麗な円錐型になっているもの。

固め筆と捌き筆

筆には穂が固めてある「固め筆」と最初から固めていない「捌き筆」があります。
固め筆は穂の半分ほどをおろして使っても良いし、全部捌いてから使っても良いように作られています。
捌き筆は、毛の弾力があるもの、先端の揃い方、毛が均一なものを選びましょう。

筆の扱い方(おろし方と洗い方)

太筆の場合
固め筆を下すときは、使用する部分をぬるま湯につけ丁寧に穂先から指でほぐし、のりを十分取り除いてから使用してください。
使用後にう際は、墨がなくなるまで根元を重点的に丁寧に洗います。
特に筆の根元に墨が残りやすいので、十分に洗ってください。多少力を入れても大丈夫です。腐って毛が切れる原因になりますので、心配な方は「筆シャン」などの専用の洗浄液をご使用ください。

洗い終えた筆は、水分を取り穂先を整えてから十分乾くまで風通しの良い太陽光があたらない場所に吊るして乾燥させて下さい。

細筆の場合
細筆は、約1/3程度を指で丁寧に保護してからご使用ください。
使用後洗う際は、書き損じの紙などに水を含ませ、その上で穂先を整えるように墨をふき取り、よく乾燥させてから筆巻に保存してください。

修理筆について

当社にて取り扱いメーカーの商品に限り、修理を承ります。
筆の根腐れ、軸の割れ等修理が必要な場合はご相談ください。
費用はお客様の負担になりますが、修理させていただきます。
メール、お電話にてまずご連絡ください。

筆に使われる毛とその特徴

羊毛以外にもさまざまな動物の毛で筆が作られます。

山馬
楷書用の筆として流行しました。とても硬い毛で、現在は高級品として知られています。

馬毛
硬いが弾力があり、楷行書用筆として一般的に使用されています。
ほど良い硬さとしなやかさが特徴。太筆によく使用されます。羊毛に比べて弾力が強く、墨含みが少なくなります。
中でも天尾(あまお)と呼ばれるしっぽの根元の毛は最高の弾力があるとされ、筆の弾力を出すために剛毛や兼毛の太筆に使われています。

イタチ毛
毛質はほど良い弾力がありしなやかで、筆の毛先が鋭くまとまります。
柔らかさ、弾力、鋭さ、粘りもよく滑らかな書き味で、トメ、ハネ、ハライが綺麗に表現できるため、楷書、行書、仮名の筆によく使用されます。
初心者にも使いやすく人気です。イタチ毛の細筆は細くすっきりとした流麗なかな文字にもおすすめです。

狸毛
硬くてしなやかな毛質。 美しいとめやはね、はらいを表現することができます。
イタチよりも毛足が長いので中字筆に使用され、またまとまりすぎることなく、線に程よい荒さをだすことができるのが特長です。
創作用などにも好まれている筆です。

羊毛と白馬の兼毫筆
適度な弾力があり、初心者でも扱いやすい毛質です。楷書やお手本書きにおすすめの筆です。

兎毛(しごう)
兎の毛は丈夫で古くから筆に使われていました。
代表的な紫毫(しごう)と呼ばれる黒い兎の毛は、トメ、ハネ、ハライ綺麗に表現でき、写経筆などによく使用されています。

玉毛(たまげ)
猫の毛は玉毛と呼ばれ、毛の中ほどにふくらみがあり、切っ先に力があり独特の粘りがあります。
細い線を引くのに適しているため、仮名用筆に使用されます。 羊毛とは違った粘りのある独特な線が書けます。



毛の配合による呼び名
筆は毛の配合により、呼び名があります。

①剛毛(ごうもう)・・・馬やイタチなどの剛い(かたい)毛だけで作ったもの
②兼毫(けんごう)・・・兼毛ともよばれます。二種類以上の動物の毛を混ぜたもの。
③柔毛(じゅうもう)・・柔毫(じゅうごう)ともよばれます。柔らかい毛だけを使ったもの。羊毛筆をさすことがおおい。
有限会社いずも和紙
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